北斗の拳の論理学

本日の内容

  • 口上
  • 言わねば殺す
  • 言っても殺す
  • 論理式「P⇒Q」は、Pが偽であればQがなんであっても真
    • 言わないので殺す
    • 言わないけど助ける
    • 言ったので助ける
    • 言ったけど殺す
  • ケンシロウはウソをつかない
  • セリフには気をつけよう

口上

本日の話題は、「無限の住人」というマンガを読んでいて思いついたのですが、「北斗の拳」に舞台を移してお送りいたします。

言わねば殺す

悪者をとっつかまえた正義の味方が「言わねば殺す」なんて脅すシーン、ありますよね?北斗の拳なんかは、そんなのがいっぱい出てきたように思います。


で、

ケンシロウ「言わねば殺す」
モヒカン雑魚「○○○…だ。さあ、言ったぞ。助けてくれ」
ケンシロウ「…。お前のような悪党が、命が助かると思っているのか?」
モヒカン雑魚「そ、そんな~」

どっかん!

なんて言うのは、どうなんでしょう?「あり」なんでしょうか?

こないだまで「そういうのって、いくらなんでもひどいよな」と思っていたのですが、あんがいそうでもないかも知れない、と思い始めました。

言っても殺す

これってですね、「言わなかったら殺す」と言ってるわけで、「言ったら」の時は何も約束していないわけです。
ですので、殺しても殺さなくても、どっちでもいいことになります。(道徳とか法律とかは別として。)


だって「言わねば殺す」と同時に「言っても殺す」と言っても、別に矛盾はないじゃないですか。この2つは、別な約束なんですから。
だから、わざと後者を言わなかった(もしくは言及しなかった)としても、少なくともウソはついていないことになります。

論理式「P⇒Q」は、Pが偽であればQがなんであっても真

というのは、「論理式『P⇒Q』は、Pが偽であればQがなんであっても真である」というルールがあることから思いつきました。


「言わねば殺す」という条件の時に、結果は4通りあります。「言わないので殺す」「言わないけど助ける」「言ったので助ける」「言ったけど殺す」ですね。

言わないので殺す

約束通りの行動であって、問題はありません。ケンシロウの行動は「真」です。

言わないけど助ける

約束を破っています。ですので、ケンシロウの行動は「偽」です。

言ったので助ける

まあ、約束通りでしょう。ケンシロウの行動は「真」です。

言ったけど殺す

これが問題です。が、ケンシロウは「言わなかったら」のことしか約束していません。「言ったら」のことは何も約束していないのです。ですから、何をしてもいいことになり、約束とは関係なしに、ケンシロウの行動は「真」です。


わかりにくいですか?例えばですね、ケンシロウは「言わねば殺す」のあとに「言っても殺す」と言うつもりだったとしましょう。
でも、モヒカン雑魚があせって勝手に「言います言います助けてください」なんて言ってしゃべっちゃったとしたら、どうしましょう?

「言ったから助けてやろう」ってのもありですが、「最初っから殺すつもりだったのに、お前が先走っただけだ」とも言えますよね?
で、あるからして、ケンシロウが「どっかん!」とやっちゃったとしても、その行動は「真」には違いありません。


つまり、Pが偽であるときは、Qがなんであっても(どんな行動をとっても)真なので、「言わない」が偽になった時は、殺しても殺さなくても真、という理屈です。

ケンシロウはウソをつかない

と、こういう理屈になります。なるほど、ケンシロウは、悪人を懲らしめるためにはウソをつくこともいとわないのかと思っていたら、ウソはついていなかったんだな?

さすがは世紀末救世主、論理学にもくわしかったようです。


(しかし、この論理だと「言わねば殺す」と言われたモヒカン雑魚は、その段階で、自分で生き延びる方法はなくなる(ケンシロウ任せになる)ことになります。ま、モヒカン雑魚VSケンシロウだし、それもしょうがないかもしれません。)

セリフには気をつけよう

ところが、この論理には1か所だけ気をつけるべきところがあります。
「言わねば殺す」なら大丈夫ですが、「言えば助けてやる」だと、ウソになります。


ですので、今後、この系統のマンガを描こうという閲覧者の皆様は、このような研究結果を踏まえ、登場人物のセリフは「言わねば殺す」にしましょう。

うっかり「言えば助けてやる」にしてしまうと、主人公がウソを付くことになってしまいますから。






おしまい。